Scrap Book of District 11

備忘録とか

川端康成『雪国』読了

読んだのは岩波版。

舞台である越後湯沢もとい魚沼市には昔訪れたことがあるので、昔の雪国の暮らしはこんなだったのか、と思いを馳せながら読んでいました。

 

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。(p.7)

有名な一節。これは実際に体験したことがありまして。
前述の通り、友人と越後湯沢へ一泊二日の旅行へ行った際に、正にこの光景が見えました。スッキリと晴れ渡った空模様の関東方面から、越後山脈のトンネルを抜けた途端、一面の雪原に。

山を一つ(と言っても、大きな山脈ですが)隔てるだけで、こんなにも景色が違うことには驚きました。

 

全体的に文章表現がどことなく艶めかしい感じがあった気がします。美しい日本語です。
特に駒子の感情の機微や葉子の描写は、幼く無垢であるような、それでいて色っぽさもある、二つの相反する要素が同時に存在していて、不思議な感覚に陥りました。

越後湯沢…というか、魚沼の情景描写もまた哀愁漂う雰囲気があり、個人的にそこが気に入っています。小学生の頃、社会科見学で「雪国の昔の暮らし」の展示を見に行った時の再現模型を思い出しながら読んでいました。

この哀愁漂う雪国の情景描写と、帯びていた熱が雪で冷えていくような駒子の心情描写が重なっている気がして、暗喩が巧みだと感じています。

最後は何とも物悲しげな終わり方でした。きっと島村はもう二度と温泉町に戻ることはないし、駒子はまた病人(葉子)を看病しながら今までと変わらず暮らすのだと思うと切ないです。駒子には同情してしまいます。

 

川端康成の『雪国』を読もうと思ったのは、ヨルシカの画集アルバム『幻燈』がキッカケでした。こちらに「雪国」という楽曲が収録されています。

しっとりとした曲調に、冷え切った二人の関係を描いた「雪国」は正に、島村と駒子の熱を失いつつある関係性を表現しているように思えました。
改めて聞くと、とても素敵な楽曲ですね。

 

次は何を読もうか考えている途中ですが、今は『カフカの日記(ハードカバー本)』『無関係な死・時の崖』『壁』『或る少女の死まで』を同時に読みかけているので、いずれかをこの冬に読了したいですね。

積んでいる未読の文庫本は『病床六尺』『燃え尽きた地図』『志賀直哉随筆集』『文鳥夢十夜』『斜陽』。

安部公房作品を読み進めたい気持ちもありますが、いかんせん物凄く頭を使うので、室生犀星の『或る少女の死まで』が比較的読みやすいかと思わなくもないです。が、まだ読んだことのない作家の作品を読むのも、それもまたよし。悩ましいです。